もはや若白髪ではない

そう、もはや、これは若白髪ではないのです。

私が首輪を付けられる日 4

私と男の関係が少し変わったのは、付き合って半年過ぎた頃だった。

私達は、2週間に1度、ほとんど決まった曜日に決まった時刻、

待ち合わせは、いつも同じホテルの駐車場になっていた。

そして、その日は、ちょうど男の誕生日の前日だった。

 

男は、始めから今日まで、本名をというか、苗字を名乗ったことが無い。

そして、私も同じように苗字は名乗らないまま、男の苗字も聞くことはしていない。

私にしてみれば、別に知られて困ることは無い。

同棲相手は居ても、れっきとした独身だからだ。

しかし、男の方は、後ろめたい事があるだろうから、私はあえて聞こうとはしない。

名前だけでなく、職業も住まいも、もちろん誕生日も、私から聞いたことはない。

考えてみれば、そもそも私は男に質問をしたことがないのだ。

それは、男が私に何も聞いて来ないからだ。

聞かれたくないから、聞くこともしないのだろうと、私はそう理解していた。

 

ところが、ある日、男は屈託のない笑顔で、私に誕生日を聞いてきた。

それに答えたからには、男へも聞くべきだろうと思い、聞き返した。

これも、男の計算された誘導だったのかも知れないと、今なら気づく。

男は、「おちゃこさんの誕生日は、何が欲しい?」と更に詳しく聞いてきた。

私は(えぇ?互いの誕生日を祝うの?)と驚いた。

体だけの関係と、あからさまに線を引かれていたと思っていたから、

男の、その発言は意外だった。

日にちを聞いてみれば、私の誕生日より1か月程度、早い。

まずは、男の方を祝い、その反応で自分の時の事を測ろうと思い、

男に、「あなたは何が欲しい?」と聞いてみたところ、

「おれは、おちゃこさんが欲しい」と、少し甘えたように言った。

 

そして当日、私は男にアロマオイルを持って行った。

アロマオイルマッサージをプレゼントとすることにしたのだ。

以前アロマテラピストだった私は、それしか思いつかなかったという訳だ。

さっそくベッドに裸でうつ伏せになった男の引き締まった臀部は、美しかった。

しかし、私は欲情はしない。

私は、何度、この男に逢っても、欲情より緊張を覚えるのだ。

極めて穏やかな男を前に、なぜか緊張で上手く言葉が出ない。

男は、逢う度、決して私への愛撫に手を抜かない。

毎回、世界でもっとも愛おしい女性を抱くように私を抱く。

しかし、私の体の反応以外、聞きもしない男に、

どうせ、やるだけだと思われていると感じていた。

それが、切なくて虚しかったが、同時に、

毎回の逢瀬が真価を問われる試験のように捉えていたのかもしれない。

私は、黙って小1時間、懸命にオイルマッサージを施した。

そして、すべて終了し、眠ってしまっていた男を起こした。

「あぁぁ、気持ち良すぎて寝ちゃった」

そう言いながら起き上った男は、おもむろに自分のバッグのところへ向かう。

私はベッドに残されたまま、男の背中を見ていると、

男は背中を向けたまま、こう言った。

「もう一つ、プレゼントしてほしいんだ。おちゃこさん。」

振り返った男は、小型のビデオカメラを手に持っていた。

 

もちろん、私は断った。

しかし、男は一歩も引かない様子で、断る私さえも映し続ける。

「撮らないで、お願い」と、ついに伸ばした私の手を、

男は、強く掴んで制し、穏やかに言った。

「おちゃこさん、おれのモノを、しゃぶりなさい。」

そう言われた瞬間、どういうわけか、私は男の足元に自ら跪いていた。