もはや若白髪ではない

そう、もはや、これは若白髪ではないのです。

同居人

言い争いは、思いのほか、エネルギーを使うものだ。

この体の気怠さは、そのせいにしよう。

 

言い争うと言っても、あの男とは、

罵声のキャッチボールすら成立はしない。

私が考え抜いた文句や愚痴、上手い事言ったと自画自賛する名言も、

彼の耳に届く頃には、音も失ったかのように、通り過ぎていく。

 

彼は、おそらく、ある種の発達障害を持っている。

診察をしたことはないが、間違いないだろう。

ずば抜けた集中力や高い知能を持ちながら、

共感性の乏しさや、痛々しいまでに不器用な男に、

違和感を感じずにはいられないのだ。

 

共に暮らして、もう9年になるが、

解り合えたと感じた事は、一度も無い。

彼の心の鐘は、滅多には鳴らないのだ。

言葉を交わせば交わすほど、虚しさが募り、

時々、絶望を感じる。

それでも、私は、なぜだか彼と暮らし続けているのだから

苦しむのも自業自得だ。

 

彼は、悪い人間ではない。

むしろ、彼は、私の知る人間の中で、

最も正しい人間なのかもしれない。

 

人と比べて、自分を嘆いたりはしない。

自分の心を、偽ったりはしない。

妬んだり、羨んだり、恨んだりはしない。

 

その存在と向き合った時、

この極めて純度の高い透明性に、私は打ちのめされる。

彼の世界には、彼しか存在はしない。

何ものにも頼ることなく、

彼は、彼の世界を築いていく。

いつも独りで。

 

私は、そんな彼の世界を、どうしても覗いてみたいのだろう。

憧れているんだ、きっと・・・