もはや若白髪ではない

そう、もはや、これは若白髪ではないのです。

台風というピンチに、チャンス

今年も、接近するという予報を、何度となく聞いているが、

なぜか、この地域を避けて通り過ぎて行った台風だったが、

今回は、来る。

きっと、来る。

そして、来た。

天気予想図を観ながら、私は、そう確信した。

 

日が暮れた頃、吹き出した風は、

ますます、勢力を増していく。

さすがの私も、思わず、「怖い」と呟いた。

そんな私の背中を、男が「大丈夫、大丈夫」と撫ぜてくれた時、

今夜こそは、来る?

これ、きっと、来る?

ねぇ、来るよね?

優しく撫ぜられながら、私は、とりあえず、

いざ風呂を沸かさんと奮起した。

 

就寝時刻になった頃、外は大荒れだ。

窓に打ち付ける雨風の音で、テレビの音さえ、かき消される。

その頃、私は、念には念をと2度目の風呂から上がっており、

本当は、体の芯までほっかほかだが、「寒い」とのたまってみた。

 

すると、男はノースリーブの私を見て、

「着なさい、長袖を。」と諭すように言った。

だよなっとは思ったが、ここが正念場だ。

私は「ん?長袖?・・・持って無いの。」ときっぱり嘘を付いてみせた。

すると、男はおもむろに立ち、自分のタンスの段から、

長袖Tシャツを引っぱり出して、

「じゃぁ、これを着て、寝なさい」と差し出してくれた。

 

優しいねぇ、この野郎ぉぉぉぉ!

そう叫びたかったが、静かに長袖を着て、でも諦めきれない私は、

声を絞り出すように、「寝るから、手を繋いでて」と言って、俯いた。

 

こうして、手を繋いで、添い寝をしてくれた男の横で、

私は、数秒後、深い眠りに付いてしまい、

目覚めれば、丁度起きる時刻だ。

就寝時刻、起床時刻、腹が鳴る時刻に、屁が出る時刻。

私の体は、恐ろしく正確な体内時計を持っている。

24時間テレビをすべて観る事など、到底無理な事だし、

毎年、私の大みそかは、夜の10時だ。

年の初めは、朝の5時。

このペースは、地球の裏側へ旅に出ても、変わらないだろう。

電波時計と並ぶほどの、体内時計、

今回ばかりは、それが恨めしかった。

 

いっそ、会社を休む覚悟で、男に覆いかぶさってやろうかと

やけを起こしそうになったが、そんな度胸はないまま、

性欲も、増大したまま、起き上がろうとした時、

横で寝ている男の手は、まだ私の手を握ったままだという事に気づき、

私は、泣きそうになった。

 

優しいね、この野郎・・・。