もはや若白髪ではない

そう、もはや、これは若白髪ではないのです。

私が首輪を付けられる日 5

男の誕生日を境に、

逢瀬の度、男は必ずビデオカメラで撮影するようになっていた。

私は、毎度、抵抗はあったが、その事に触れないようになっていた。

そんなある日、男は私に2冊の本を手渡した。

1冊は、10年ほど前に売れた小説だった。

私は、その小説は読んだことはないが、ざっくりとしたあらすじは知っていた。

ドラマ化していたからだ。

生粋のテレビっ子が、ここで役に立った。

「とても売れた本ですね。

一応読んだことはあるけれど、詳しい内容は覚えていないわ。

嬉しい。また読みますね。」

私は、そう嘘を付いた。というより、見栄を張った。

すると男は、

「さすが、おちゃこさんだ。読書家だね。」と。

私のように、本を読まない人間は、本を読む人間を上に見る傾向がある。

読書家ぶる行為は、背伸びの骨頂なのだ。

それには気付かれず、男は更に言った。

「おれは、テレビ観ない代わりに、本はたくさん読んでいる。

本が好きなんだ。きっとおちゃこさんも、色々知ってるんだろうなぁ。

おちゃこさんのおススメ本も教えて欲しい。」

ない!

1冊も出てこない!

しかし、一応考える振りをしながら2冊目を見てみると、奇跡的にも、

それは本当に読んだことのある小説だった。

テレビっ子も大人になれば読みたいと思える本とも出会える。

そして、それはだいたい官能小説だ。

私も多分に漏れず、以前、官能小説にどっぷりハマったことがあったのだ。

その中でも印象に残った小説本が、再び、この手に渡された。

 

内容は、いわゆるSMの世界の話だ。 

魅力的な女を、絶対的な主として操る男の官能小説だということは記憶にあったが、

似たような本を読み漁っていたから、詳細は思い出せなかった。

私は「あらっ、こういうのも読むんですね。

面白そう。読んでみるわ。」と白々しく言ってみせた。

 

読み終えた頃、次の約束の日がやってきた。

いつものホテルで落ち合うと、男は大きなバッグを持っていた。

そして、そこからビニールに包まれた物を出し、

「これに着替えてほしい」と渡してきた。

それは、読んだ本の中の女が着させらていたものを連想させるような、

官能的な下着のセットだった。

その時、私は、下着について驚きもなく、

反射的に「はい」と答えて、すぐさま着替えに立った。

男の調教は、もうとっくに始まっていたのだった。